ベトナムの偽造証明書とは【販売者編】

ベトナムで証明書の偽造があると聞いたことがあるんですが詳しく教えて下さい。

個人証明書や学位、免許、資格関係など多岐に渡って偽造を請け負う業者がいます。現状は警察とのいたちごっこのようです。

ベトナムで生活をしていますと色々偽物を見る機会がありますが、証明書の類でも偽造が見られます。素人目には見分けがつかないものも多く、本物を見慣れていない外国人が偽造品に違和感を持つことは恐らく難しいでしょう。今回は証明書の偽造販売における実態について紹介します。

多くはSNSを使って宣伝

この手の商売は足がつかないことが第一なので身元を偽って宣伝しやすいSNSが利用されます。もちろん住所などは書いてありませんし、記載されている電話番号も本人の個人証明書で登録していない電話番号かと思われます。

上の画像は学校の卒業証を作成するサービスの広告です。下部には「Uy tín-Chất lượng-Bảo Mật cao(信頼、高品質、高い安全)」の文言があります。サービスの内容的になかなかの皮肉を感じるのは私だけでしょうか。それ以外の案内や記載を読むと高校の卒業証の需要が高いようです。これは多くの企業が従業員を募集する際、高卒以上を最低条件に掲げていることが窺えます。

学歴証明以外にどんなものがある?

実際に料金を掲げて案内しているウェブサイトがありましたのでこちらを例に紹介します。

https://lamchungchihcm.com/lam-chung-chi-toeic-toefl-itp-ielts-tai-ha-noi-0939333220/

普通に会社として運営しているように見えますが、住所は大雑把にHà Nội/HCM/Đà Nẵngとだけになっていますのでそういうことなんでしょう。このサイトもいつまで閲覧できるか分かりません。

さて、こちらではTOEICの証明書作成の他、その他の資格についても料金の案内がされています。見てみますと100万~300万VNDとなっていますが、TOEICの点数が高いほうが料金も高い、というサービスではないようです(記載の点数で業者の手間が変わるわけでもないのでそれも当然)。

学歴、語学の他、チーフアカウンタントや建設の現場管理と思われるものも料金案内がされています。また「Chứng chỉ SƠ CẤP TẤT CẢ CÁC LOẠI NGHỀ(各種職業資格証明)」と書かれていますので、恐らくどの証明書の作成にも対応しているのでしょう。

一応大義名分があるらしい

ウェブサイトにこんなことが書かれています。

Lưu ý : mình ko nhận làm các loại giấy tờ nhằm mục đích lừa đảo hoặc sử dụng vào những mục đích xấu khác. Mong muốn giúp đỡ dc những người thực sự cần bằng cấp cho công việc. do nhiều lý do khác nhau mà ko thể theo học hoặc học còn dang dở……xin cám ơn!!

概訳

留意:詐欺目的、または悪用のため作成を依頼する場合は受け付けません。仕事を得るために本当に学位が必要な方(様々な理由で学校に通えない、または卒業できない方)を助けたいと思いサービスを行っています。

Làm chứng chỉ TOEIC nhanh, TOEFL ITP, IELTS – 0939333220 – Alo 0939.333.220 (lamchungchihcm.com)

う~ん。どうなんでしょうね、これ。

ベトナム人の友人複数に聞いてみますと皆さん「そう言ってるだけ」と答えます。表面的に悪いことやってるんじゃない、人助けアピールでしょうか。

「そもそも関係のない組織がその証明書作ってる時点でアウトでしょ」と冷静なベトナムの友人。

ロカール企業は慣れっこ

こういったものが横行すると正式にその証明を取っている人にも疑いの目を持たれることがあります。私がかつて勤めていたローカル企業で部下の採用をしていたときの話です。日本語N1の資格証明書を添付して応募してきた人がいました。N1と期待を募らせていましたが、会社の仲間は「書類の証明なんてどうにでもなる。会ってみるまで分からないよ。」と冷めた反応。

その応募者と実際に会ってみて、N1に値するレベルでしたので問題はなかったのですが、こういった証明書をむやみに信じるもんじゃないということを学んだ出来事でした。

警察もこの手の業者の摘発は行っていますが撲滅は難しいのが現状で、仮に偽造の書類を出されたとしても見破ることはできないでしょう。だからこそ面接や試用期間の実務を通して、その人が本当にその証明に値するスキルをもっているのか見定める必要があるわけで、採用者の能力が逆に問われるとも言えます。

次回は実際にこのサービスを利用したことのあるベトナム人からヒアリングした内容を紹介します。

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