企業都合による入社日の延期に補償を求めることはできるか?

Covid19に起因する会社都合により入社日が数カ月遅れています。入社日に合わせて前職を退職しているので無給の期間が数カ月できることになるのですが、この場合は会社に対して補償を求めることができるのでしょうか?

日本国内であれば会社都合の場合は補償を求めることもできますが、ベトナムでは現状難しいと考えるべきだと思います。

入社日はお互いに擦り合わせながら決めていくものですが、一度確定したものを会社都合により大幅に遅らせた場合、入社予定の人は黙って従うしかないのでしょうか。今回は入社日が遅れた場合に企業側がとるべき対応について解説します。

日本の場合はどのように解釈されるか

日本で内定を定義・明文化している法律はありませんが、過去の裁判例の蓄積などにより内定は「始期付きの解約権を保留した労働契約」と法的にみなされています。(大日本印刷事件、最二小判昭和54年7月20日)

*始期付きの解約権を保留した労働契約:採用通知書や誓約書などに定めた内定取り消し事由(学校を卒業できなかった、提出した書類に偽りがあった、など)に該当した場合に労働契約を解約する旨を含んだ労働契約を指す。

つまり内定は労働契約の一種となりますので、内定の取り消しは「解雇」に当たりますし、内定で通知した内容を労働者の合意なく変更するということは認められていません。

ですので入社日の変更を労働者が合意しない場合は、事前に決定している入社日で入社させなければならないということになります。またこの場合予定通り入社している(その企業に籍がある)状態で企業都合により出社させないという扱いになりますので、当然企業はその従業員に休業補償を支払う必要が出てきます。補償額は就業規則などに定めがない場合は賃金の60%以上とされています。

ベトナムではどのように扱われるか

まずは内定に労働契約としての役割があるかという解釈からになりますが、現時点でベトナムでもそういったことを明示している法律はありません。また過去の事例でも内定段階における労使での争いについての事例が上がってこないことから、入社時期の変更についての補償を求めることは難しいと考えられます。入社時に労働契約が締結されて初めて労使での関係が成り立つと解釈するべきでしょう。

また逆の立場で見ますと、たとえ労働者が内定通知書に記載している入社予定日に入社しなかったとしても企業側が当人に対して何かしらの賠償を求めることは難しいと言えます。日本であれば前述の通り内定は労働契約の一種とみなされていますので、内定辞退により企業に著しい損害が発生した場合はその賠償が認められることもあります。しかしベトナムではそういったこともできないと考えておいたほうがいいと思われます。

ベトナムでは労使ともに入社までは信用ベースでの関係になると考えたほうがいいでしょう。

Facebook
Twitter
LinkedIn
Pocket
Email

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA