ベトナムで採用活動をする際に応募条件で記載してはいけない事項にはどのようなものがあるのでしょうか?
具体的な項目の縛りはありませんが、迷った場合は日本の基準を参考にしてください。
ベトナム国内の求人を見ていますと会社が求める人材像をストレートに表現しているものを見ることがあります。特にローカル企業の募集でよく見られますが、ベトナムの法律ではこの点に関する縛りはないのでしょうか?今回は求人に記載する応募条件について解説します。
法律上の取り扱い
ベトナムの労働法第9条2項に以下のような規定があります。
2. Nhà nước, người sử dụng lao động và xã hội có trách nhiệm tham gia giải quyết việc làm, bảo đảm cho mọi người có khả năng lao động đều có cơ hội có việc làm.
(国家、使用者、社会は雇用解決参加、労働ができるすべての者に雇用の機会を一様に与える責任を負う。)
「雇用の機会を一様に与える」という記載から「応募の制限をしてはならない」と解釈できるかもしれません。ただ上記の「雇用」にあたるベトナム語が「việc làm」であり「採用」にあたる「tuyển dụng」と同法上で区別されていることから、上記は「採用後の就業機会に対する平等性」を規定しているとも解釈できます。
いずれにしても労働法で入社前の採用について取り扱っているのは第9条のみであり、具体的に募集要項を制限する規定や罰則はありません。ただし慣例としてベトナム国内でもあからさまな応募制限は、求職者の気分を害することやその企業の印象を悪くする可能性もありますので、控える企業が多くなっています。
また法律家の間でもこういった分野で進んでいる国(アメリカなど)などを例に挙げた議論があることなどから、今後具体的に法整備がされることも十分考えられます。このような流れから応募条件に記載する事項とすべきでない事項を意識しておくことをお勧めしますし、日本での法律基準が参考になります。以下でベトナムの求人でよく見られる例を参考に見ていきましょう。
よく見られるローカル企業の応募条件と求職者からの印象
年齢
多くの求人で年齢制限を記載しているものが見られます。年齢制限について批判的な声が上がっていることはそれほど聞きませんし、応募時点で双方のミスマッチが起きないために年齢制限を掲げることに違和感を感じない人は多いように思います。また高齢者の雇用を守るといった感覚がそれほど根付いていないことも一因でしょうか。
性別
一般的に男性または女性が従事する職業と認識されているものについては違和感なく受け入れられています。ただし社内の人数構成や感覚的な理由(男性より女性のほうが真面目、など)で制限しますと求職者からは疑問に思われることもありますので注意してください。
婚姻の有無
これはどのような状況でも記載しないほうがいいでしょう。昨今は女性に対する婚姻の有無についてベトナム社会でもナイーブなものとして取り扱われますので、求人に掲げると印象は悪くなります。同じく子どもの有無などについても同様のことが言えます。
容姿
主に営業職で見られる項目です。身近なところでいうと技能実習生送り出し機関で日本人向けのセールスレディなどでよく見られます。容姿端麗、会社によっては身長まで求めているところもあります。本来は記載を控えるべき項目ですが、私が聞く限りではセールスレディとはそんなもんだと割り切っているベトナム人が多かったのが印象的です。
近いうちに具体的な法整備がされるとしたらこれらの部分かと思われます。他にも出自や出身地などが考えられますが、この点についてはベトナム国内で既にあからさまな差別表現として認識されていますので求人要綱として目にすることはありません。いずれにしても記載していいか迷った場合は現在の日本基準で行えば間違いないでしょう。
余談ですが人材紹介を依頼いただく場合は、エージェントに対して求める人材像をストレートに仰って頂いたほう喜ばれます。そのほうが紹介する人材と募集側のミスマッチが防げますし、エージェントにとっても事前の選別がやりやすくなるからです。