なぜベトナムでは青いインクが好まれて使われているのでしょうか?
公的書類のように青インクが指定されているものもありますし、青字に対するベトナム人の感覚が関係しているようです。
ベトナムで生活していると標準で使われているペンの色が青色であることに気付きます。黒が標準の日本人にとって違和感を感じた人もいるかもしれませんが、なぜベトナムでは青が一般に使われているのでしょうか。本記事ではその点について解説します。
公的書類は青インクでのサインが義務付けられている
行政関係の書類は議定30/2020/NĐ-CPにて以下のように規定されています。
quy định rõ, khi ký ban hành văn bản hành chính bằng giấy, thì phải dùng bút có mực màu xanh, không dùng các loại mực dễ phai.(行政書類の署名ははっきりと、また色褪せにくい青色のインクを使わなければならない)
以前は上記のような定めはなく議定110/2004/NĐ-CPでは青いインクの使用を義務付けていませんでした。こちらでは「鉛筆、赤いインク、または色褪せやすいインクを使用しての署名は認めない」となっており、黒インクでの署名も可能でした。
なぜこのような変更がされたかですが、通常行政関係の書類は黒字で作成されるので同じ黒インクでサインをすると見分けにくいという点(直筆なのか、コピーなのか)や黒以外の色を指定する際に赤はスタンプの色なので、他に一般的に使用されている青インクにすることが便宜上合理的だとの判断があったようです。
ベトナムでは学校でも青が普通
ベトナムでは学生が授業のノートをとったり、試験の解答用紙に記入するときも青のボールペンが使われています。なぜ鉛筆ではなくボールペンを使うのかという話は一先ず置いておいて、なぜ黒ではなく青が使われるのかについて説明します。
まずベトナムの公的な試験(入学試験など)で青いインクを使用することは義務付けられていません。つまり黒のインクで提出しても問題ないわけですが、従来の慣習から青いインクのペンを使用しているのが現状です。一般的に青いインクで清書された書類は一番見栄えがいいという観念がベトナム人にはあるようで、そういった部分が関係しているそうです。
また黒よりも青が普及した歴史として、当時黒のインクより青のインクのほうが値段が安かった、黒のインクより青のインクのほうが色褪せにくい、黒は毛筆で使用される色でそれ以外の筆記には青が好まれた、など諸説ありますが本当のところははっきりしていません。
またボールペンを使用する件ですが、上で書いた通りベトナムの学校におけるテストや資格試験などはボールペンでの解答記入が一般的です。間違えた場合は修正液などで訂正しますが、そもそも鉛筆やシャープペンシルを使わない理由は容易に消えないようにするための他、不正防止のためだそうです。私がこれを聞いたときは「そもそもカンニングに鉛筆だろうがボールペンだろうが関係ないのでは?」と思いましたが、これは解答提出後の試験官による不正を防ぐ理由もあるようです。消したり書換えがしやすい鉛筆よりボールペンのほうが安全性が高いと言ったところでしょうか。私の感覚では試験の不正というと受験者のほうに目が行きますが、試験官のほうにも不正防止の対策が張られているというのは、なんというか「さすが」と感じました。
ベトナムの事務所などは通常黒のボールペンより青のボールペンのほうがストックが多いですし、とりえずベトナム関連の書類については黒より青のペンで記入する習慣をつけておいたほうが無難でしょう。尚、試験でボールペンを使用する理由については聞く人によって異なる見解が出る可能性がありますので、あくまで参考としてご理解ください。