大学受験:ベトナム人はどうやって進路を決める?

ベトナム人の大学受験生はどんな感じで進路の決定、受験勉強をしているのでしょうか?日本人の受験生と似たようなものでしょうか?

大きくは変わりませんが、将来の就職先を想定して学部選びをしている人が多い点や高校の卒業試験と大学の入学試験が同じ試験であることから、その準備に対する姿勢などの違いが目立ちます。

ベトナムでは年々大学進学を希望する学生が増えており、大学受験は高校の卒業と共に社会的にも重大なイベントとなっています。今回は弊社の求職登録者からインタビューした結果を基に、ベトナムの大学受験の特徴、日本の大学受験との比較などについて紹介します。

ベトナムの大学入試制度

ベトナムの大学入試は、日本のセンター試験に相当する「統一高校卒業試験(THPT)」と、各大学で実施される入学試験の2段階で行われます。統一高校卒業試験の結果は高校の卒業基準にも使われますので、大学進学を希望しない学生も受験することになり、その点が日本のセンター試験と異なると言えるでしょう。因みに全てマーク式試験であるのは日本と同様です。

統一高校卒業試験は全国一斉に実施され、毎年その時期になると時事ニュースなどでも大きく報道されます。少し前には同試験が有力者による不正操作で世間的に大きな話題となりましたが、その後に受験する大学の分かれ道となりますので、受験生にとって非常に重要な試験となります。

(統一高校卒業試験後に各高校の平均点が出され上位高が発表される。同画像はハノイにある高校の順位。)

この試験結果が出た後に各大学を受験するための基準点が発表され、自分の持ち点に応じた大学を選択して願書を提出するという流れとなります。因みにベトナムでは志望校を目指すための浪人や受かった大学が無くて仕方なく浪人するというケースは稀で、浪人生は何かしら特別な事情がある人という印象になります。

いつから受験勉強を始める?

大卒の求職者に受験勉強を始めた時期を聞いてみると、高校1年からという回答が意外に多かったので驚きです。ただもう少し突っ込んで聞いてみると高校1年時は受験勉強というよりも学校で教わる勉強を一生懸命やっていた、という方が的確な気もしました。そういった勉強も受験勉強の基礎に繋がるという観点であれば、高校1年から受験勉強をしていたとも言えるかもしれません。

ただ日本と違うと感じたのは高校時点で既に将来進みたい業界やそのためにはどの大学に進むべきかというビジョンを持っている人の割合が高いことです。大学に入ってから気が変わったり、やっぱり合わないと感じることもあると思いますが、卒業学部と関連する業界に就職する割合が高いベトナムでは高校の時点で将来を見据えた学校選びが重要であることが窺えます。因みに女性で特に将来やりたいことがなければとりあえず会計学部に進んでおけ、というベトナムあるあるですが、かつてはその方面に進んでいれば職に困ることはないとされていたそうです。ただ現在はこういった会計学部卒の大卒が増えすぎて、会計職に就きたくても就けないという新卒者がたくさんいます。

具体的にどのように進路を決める?

ベトナム人受験生が進路を決める際、以下を参考に決めている人が多いです。

自分の興味や関心

まずはこれを考えることから始めます。こういった興味があるかどうかはその後の受験勉強のモチベーションに大きな影響を与えますし、その後に就く職業にも繋がってきます。KPOPが好きで韓国語学部に行きたかったが親に反対されて日本語学部に進まされたという登録者もいました。泣きながら受験勉強したと言ってましたが、今となっては日本語学部に進んで良かったと言っています。

大学のレベル、立地

続いて自分のレベルに届きそうな大学、家から通えそうか、などを考えます。日本のような電車通学はありませんので基本徒歩や自転車、バイク、バス通学となります。ですので通学時間といえば片道1時間ぐらいが限界でしょうか。それ以上の距離となると下宿が基本となります。因みに私は大学生時に片道2時間かけて通ってましたので、これも日本の電車通学だからこそできたことだと実感します。

親の意見

これらが確定すると、いよいよそれを親に受け入れられるかの問題があります。地方住であれば親元を離れて大学に行くことに抵抗がある親もいます。また親が不本意な進路を希望している場合はその変更を言うこともあるでしょう。

他に経済的な事情でその希望を受け入れられないということもあります。国立大学の学費は現在年間で20万円前後なので、貧しくても何とか工面できる家庭は多くなっていますが、私立大学は高いところですと日本の私大とそれほど変わらないところもありますので、一般的なベトナム人家庭では難しいところも多いと思います。かつては経済的に厳しい家はたとえ勉強ができても高校卒業後は働いて家族を助けてほしいという親が多かったのですが、現在は将来的な仕事を考えると大学進学をするほうが有利ということから何とか工面して大学へ進ませる親が増えています。

そういう背景を考えると大学に行ける学力がある高卒者が減っているということで、高卒出身者の学力レベルは下がっていく傾向にあるのかもしれません。

ベトナムは経済レベルを考えると相対的に基礎教育がしっかりしていると言われており、識字率も98%前後と非常に高いものとなっています。近年は上の層のレベルの引き上げを狙った詰め込み教育がよく話題となりますが、各親の教育投資熱などを考えるとこれからも受験戦争が激化していくと思われます。

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