労働許可書で卒業学部の要件が撤廃された背景

労働許可書の発給で学部要件が撤廃されたので、現地採用を採りやすく助かっています。今回どうしてこのような改正があったのでしょうか?

各方面からの要望があったようですが、ベトナム企業も同じような悩みを抱えていたことが大きかったようです。

ベトナムの労働許可書は取得要件が厳しいことから多くの企業が頭を悩ませていました。特に就業予定の職種と卒業学部の一致性を問われるのはハードルが高く、これによりベトナムでの就業を断念された方は相当数いらっしゃいます。ところが2023年9月にこの卒業学部との関連性が撤廃される改正が実施されました。今回は撤廃されることになった背景について紹介します。

卒業学部の関連要件撤廃へ

労働許可書の取得には現地代表者などの「管理者」を除き、自分が働く予定の職種と関連する大学の学部を卒業していることが条件とされていました。(例:経理職であれば会計学部卒、プログラマーであればIT関連の学部卒、など)

ただ文系を筆頭に多くの日本人は自分の卒業学部と関連性のない職業に就くことが多いので、こういった日本の社会事情からベトナムの労働許可書の取得に苦労することがよくありました。しかし2023年9月18日の法改正により、卒業学部の関連性が撤廃されたため労働許可書取得のハードルはぐんと下がったと言えます。改正の発表と共に即座に施行されたので、かなりスピード感があった印象です。

撤廃された背景

学部の関連性がネックになっていたのは日本企業に限らず、他の国籍の企業にも当てはまります。労働傷病兵社会省によると、2022年末時点で120カ国以上から12万人近くの外国人労働者がベトナムで働いているとのことで、2021年と比較して20%近く増加しています。これについてはコロナ禍による一時の外国人労働者の減少もありますが、これからも外国人労働者の数は右肩上がりに増えていくだろうと予想されています。内訳は中国人が20.3%、韓国が9.18%、台湾(中国)が3.12%、日本が9.9%となっており、残りは他国からの労働者となっています。

外国人労働者の割合が高い国から労働許可書の申請要件に関する意見が多かったというのは想像できますが、実際に撤廃に踏み切ったのにはベトナム企業からの意見が大きかったようです。

関係筋の話によると、

「近年ベトナム企業も力をつけて資金的にも外国人の専門家を雇えるような会社が増えた。が、学歴要件などの条件全てを満たした人材を探して雇うのは容易ではない。かつては正規ではない手口で労働許可書の取得もできていたが、それも現状では難しい。そうなると外国人を雇うに当たって供給源が限られるベトナム企業は不利になる。こういった状況について不満を感じているベトナム企業は多かった。」

とのことです。

外国人に労働許可書を発給する前提条件として「そのことがベトナムのためになる。」というのが根本にあります。外国人を雇うことが自国のベトナム企業を発展させることになるのであれば、それは改善しなければならないだろうという決定打になったようです。

今回の改正は結果的に他国の企業も恩恵を受けるわけですが、背景としては地場(ベトナム)企業の存在が影響していました。ベトナム企業が日本人現地採用を雇う際に提示する給与はかつてと比べてかなり差が縮まってきていますので、求職者の立場からすれば選択肢が今後増えてくることも考えられます。

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