労働許可書の返却期限は15日、TRCは?

外国人労働者が退職したら15日以内に労働許可書を返却しなければならないと聞きましたが、テンポラリーレジデンスカード(TRC)は何日以内に返却しなければならないのでしょうか?

TRCについては法令で具体的な期限が定められていませんが、その理由はどうも取り消しの処理工程が関係しているようです。

自社で雇用している外国人労働者が退職した場合、その企業は退職した労働者の労働許可書とTRCの返却処理を行わなければなりません。ただ労働許可書の返却期限は法的に定められているのに対し、TRCは法的な期限が定められていません。この点に疑問を感じましたのでベトナム人弁護士と調査、意見交換した内容について紹介します。

労働許可書の返却期限

労働許可書の返却期限はNGHỊ ĐỊNH152/2020/NĐ-CPの第21条に規定されています。

Điều 21. Trình tự thu hồi giấy phép lao động(第21条 労働許可書回収手順)

1. Đối với trường hợp quy định tại khoản 1 Điều 20 Nghị định này thì trong 15 ngày kể từ ngày giấy phép lao động hết hiệu lực, (本第20条第1項に定める場合は、労働許可書の効力をなくした日から15日以内に 雇用主は労働許可証を取り消す。)

労働許可書の効力をなくした日、とはその企業で働かない日と置き換えられますので労働契約終了の日から15日以内、と解釈することができます。通常取り消し処理は書類受理から5営業日で完了するとされています。

TRCの返却期限の規定はない

労働許可書が15日以内であるのに対し、TRCの返却期限に法的な明記はありません。何となく退職後に労働許可書と併せて速やかに返却処理をしなければならないという認識でしたが、そもそもなぜ期限がないのか?期限がないということはTRCの有効期限まで処理をしなくてもいいのか?という疑問が浮かびます。この疑問を解消するに当たり、以下の観点が重要であることが分かりました。

退職した外国人労働者の企業が負う義務

ベトナムの移民法では退職した外国人労働者に対し、その身元を保証する企業は「出入国管理局へ通知するだけでなく、ベトナムに滞在している間のその者の保証及びその者の出国までの調整を求められる。」としています。つまり当人が出国するためのビザ処理(出国ビザなど)、あるいは引き続き滞在するための新規ビザ(新しい就職先のビザ、個人で取得する観光ビザなど)に関するところまで把握しておかなければならないということです。

通常外国人労働者のTRCは労働許可書に紐づいて発給されるので、

その会社を退職した時点で労働許可書の実質的な効力が切れる→➁それに伴い労働許可書に紐づいて発給されたTRCも効力が無くなる→➂そのため保証企業が出国あるいは引き続きの滞在のための調整を実施しなければならない。

という流れになります。つまり退職の時点で現行のTRCに代わる何かしらの処理義務が企業に発生することになりますので、返却期限を明記しなくてもその処理プロセスにおいて返却手続きが自動的に実施されることになるという観点となります。

実務上では退職者の出国や次の就職先までの猶予期間として現行のTRCを一定期間取り消さないことがよくあります。そのため返却期限がある労働許可書の取り消し処理をまず行い、その後TRCの返却という流れが一般的です。上述の通りTRCは返却期限が法令上ありませんので、返却が多少遅れたとしてもそれを理由に罰せられることはないはずです。ただしTRCの返却処理を行わない限り責任はその企業についてまわるので、やはり退職後には速やかに返却処理が行えるよう手配するのがベストと言えます。

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