「日本の会社はこうだから」という理由で窮屈なルールが定められています。ここはベトナムですし、それが顧客を満足させるような結果になるとは思えません。
ローカル企業で日本(人)とは・・・という部分について時々思い違いをしているように感じることはよくあるものです。変な部分だけ厳しくしても誰のためにもなりえません。
ローカル企業の中には時々間違った方向で日本に合わそうとしている会社があります。「日本の会社=厳しい、きっちりしている」というイメージは強く持たれているものの、その本質を取り違えているような場面に出くわすことがあります。今回はそのような会社に勤めるベトナム人から話を聞き、感じたことを紹介したいと思います。
昼寝を禁止した会社
ベトナム系企業で主に日本人顧客をもっている会社があるのですが、先日そこの従業員と話す機会がありました。聞くと昼休みの昼寝を禁止する通達が出され、大変不満に思っているということです。以前別のブログでもベトナム人の昼寝に関する記事を書きましたが、昼寝はベトナムにおける立派な習慣ですので、それを禁止するとは穏やかではありません。まして労務的な観点でも休憩時間は労働者の自由利用が補償されて初めて成り立つものですので、それを侵害するようなことは看過できないものです。そもそもなぜ昼休みの昼寝を禁止することになったかというと、それを通達した上司の言い分としては、
「顧客の大半が日本人であるわが社にとって、社内の雰囲気もより日本式を目指す必要がある。日本人は昼休みに昼寝などしないし、お客様がその時間帯に訪問してそのような姿を見たら幻滅させてしまうだろう。」
とのことです。カスタマーサティスファクションを追求した結果たどり着いた答えでしょうか。それで昼寝を禁止するのは極端ですし、実際のところ日本人でも昼休みに昼寝をする人はいます。またここはベトナムですので、昼休みに昼寝をしているベトナム人を見て幻滅するようであれば、それはその日本人がベトナム文化について無知だとも言えそうです。
何となくの日本企業イメージ
これまでも昼寝について似たような感覚を持っている「変に意識高い系ベトナム人」は何回か出会ったことがあります。ざっくりというと「寝る=怠惰」「寝ない=勤勉」という感覚が強いといった感じです。こういう感覚の人がトップにいるとローカル企業でも変な意味で厳しい日本式のベトナム企業が出来上がり、実際に日本人が働いている日系企業のほうがよっぽど緩いと思わせるような雰囲気となります。
「日本とはこうだ」「こうすれば日本人は満足する」といったことについてのステレオタイプが先行している組織はベトナムでは珍しくないわけですが、そこで働く労働者にとっては単なるストレスにしかなり得ないので考え物です。その辺りの誤った認識について客観的な意見を出せる日本人などが側にいればいいのですが、そういう存在がいないところでは上のような強硬な話に発展してくるのだろうと思われます。
日系カラーを出しつつもベトナムを取り入れる
日本人が新しく会社を設立したとき、あるいはこれまでの習慣を一度是正したいと考えるとき、どこまで日本式を強要するかで悩むことはよくあります。たとえ日本の会社とは言え、場所はベトナムですし、そこで働く労働者の大半はベトナム人という会社がほとんどですので、彼らの文化や習慣を無視した形で運営しても職場の満足度は著しく低いものとなり、人材の定着にも影響を及ぼしてしまいます。
和越折衷といいますか、この辺りを上手くやれている会社はやはりトップとベトナム人労働者のコミュニケーションが上手く取れていると感じます。私もこの手の相談について一般論はいくらでも話せますが、やはり最後は現場で働いているスタッフとの話し合いが一番重要だと思っています。全ての意見を迎合すると労働者にとって都合のいい規定が出来上がりかねないので、その辺りのさじ加減は必要となりますが、労使ともに満足できる会社を作り上げていくには話し合いは不可欠だと言えるでしょう。