妊娠中のスタッフは懲戒解雇できる?

妊娠中のスタッフによる不正が発覚し懲戒解雇としたいのですが、産前産後は解雇できないと聞きました。このようなケースでも認められないのでしょうか?

産前産後の女性は権利が保障されており、使用者からの一方的な解雇は制限されています。ただ今回のケースでは妊娠・出産にまつわる理由ではなく、まだ産休にも入っていませんので懲戒解雇の対象になると考えられます。

妊娠中や産後間もない女性を解雇するのは法的に問題がある、何となくでもそういった感覚を持っている方は多いかと思います。一方同じような状況でもその女性を解雇せざるを得ない事態が出た場合にはどのように扱われるのでしょうか。今回は産前産後の女性に関する退職や解雇について解説します。

妊娠中の労働者から離職を申し出る場合

ベトナムの労働法では会社を辞める場合、退職を希望する日の一定期間前までに使用者にその旨を伝える必要があります。(労働法第35条一項)

・無期雇用労働者→退職希望日の45日前

・12カ月~36カ月の有期雇用労働者→退職希望日の30日前

・12カ月未満の有期雇用労働者→退職希望日の3営業日前

通常の労働者が退職を希望する場合、少なくとも上で定められている日以上前に退職の意思を告げなければならないわけですが、同条2項では「以下の場合には、事前の通知なしに一方的に労働契約を解除する権利を有する。」として、妊娠中の女性については以下の規定が設けられています。

đ) Lao động nữ mang thai phải nghỉ việc theo quy định tại khoản 1 Điều 138 của Bộ luật này;(この法典第138 条1 項の規定に従った休業をしなければならない妊娠中の女性労働者;)

Quyền đơn phương chấm dứt, tạm hoãn hợp đồng lao động của lao động nữ mang thai

1. Lao động nữ mang thai nếu có xác nhận của cơ sở khám bệnh, chữa bệnh có thẩm quyền về việc tiếp tục làm việc sẽ ảnh hưởng xấu tới thai nhi thì có quyền đơn phương chấm dứt hợp đồng lao động hoặc tạm hoãn thực hiện hợp đồng lao động.(権限を有する医療機関が、勤務継続が胎児に悪影響を与えると診断した場合、女性労働者は労働契約の解約又は労働契約の一時停止をする権利を有する。労働契約の解約又は労働契約の一時停止をした場合、権限を有する医療機関の勤務継続が胎児に悪影響を与えることに関する診断書を添付して使用者に通知しなければならない。)

労働法第138条第一項

つまり胎児に悪影響を与えるという医療機関からの証明があれば、妊娠中の女性は事前予告期間を設けずに一方的な労働契約の一時停止または解消が認められているわけです。

使用者側が労働契約を解消できるケース

次に使用者が妊娠中の女性との契約を解消できるケースについて見ていきます。労働法第137条第3項では使用者が妊娠中の女性を退職させられる規定が定められています。

3. Người sử dụng lao động không được sa thải hoặc đơn phương chấm dứt hợp đồng lao động đối với người lao động vì lý do kết hôn, mang thai, nghỉ thai sản, nuôi con dưới 12 tháng tuổi, trừ trường hợp người sử dụng lao động là cá nhân chết, bị Tòa án tuyên bố mất năng lực hành vi dân sự, mất tích hoặc đã chết hoặc người sử dụng lao động không phải là cá nhân chấm dứt hoạt động hoặc bị cơ quan chuyên môn về đăng ký kinh doanh thuộc Ủy ban nhân dân cấp tỉnh ra thông báo không có người đại diện theo pháp luật, người được ủy quyền thực hiện quyền và nghĩa vụ của người đại diện theo pháp luật.

(使用者は、結婚,妊娠,産休,12 か月未満の子供の養育を理由にした解雇又は労働契約の解約をすることができない。但し、使用者が死亡した、民事行為能力の喪失、失踪、死亡を裁判所が宣言した場合、使用者が活動を終了した又は省級人民委員会に属する経営登録に関する専門機関が法的代表者、法的代表者の権利義務を実施する受任者の不在を通報した場合を除く。)

労働法第137条3項

ざっくりと会社の活動自体ができないような状況下でなければ妊娠中の女性との労働契約を解消することは難しいということが分かります。

妊娠中のスタッフが懲戒解雇の事例に当たる場合

このように妊娠中や産後間もない女性の権利は法によって守られているわけですが、妊娠中に懲戒解雇に値するようなことをした場合はどうなるのでしょうか?現行法ではこの点について厳密に規定があるわけではありませんが、解雇が制限されるのはあくまで妊娠・出産・保育を理由とした不当な扱いから守るためのものですので、それらと関係のない明らかな解雇理由が存在する場合は懲戒解雇の対象として扱えると考えられます。また今回の事例では産休に入る前の出来事ですので、産前産後の制限を受ける前の事柄となります。

ただしこの場合でも妊娠・出産・保育に何かしらの形で紐づけられてしまうと、その正当性が覆されてしまうことも想定できますので、その余地が全くない状況下であるか、あるいは事実を突きつけた上で合意退職の方向で話を進めるという選択もあります。

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