就業規則を作成するきっかけと周知義務

就業規則の作成に当たり押さえるべきポイントを教えてください。

最低限必要な主要項目は法律でも規定されています。あと作成した場合は労働者への周知を忘れないようにしてください。

現在就業規則は全ての企業に作成義務が課されていますが、現状就業規則のないまま事業を運営している会社もあるものです。ただ就業規則が無くても何となく上手く回っている企業でも、ふとした時に就業規則の必要性を感じることがあります。今回は就業規則に関する規定やその必要性について解説します。

就業規則作成についての規定

以前は就業規則は10人以上の労働者を使用する企業にのみ作成義務が課されていましたが、改正により現在全ての企業に作成義務が課されています。また10 人以上の労働者を使用する場合は就業規則は書面でなければならないとされています。(労働法第118条1項)

就業規則は以下の点を主要な内容として作成される必要があります。dのセクハラに関する規定は法改正の際に追加された事項で当時話題となりました。現在もセクハラが原因で処分される話題がニュースになるなど、社会的にも関心の高い事項であることが窺えます。

a) 労働時間,休憩時間
b) 職場の秩序
c) 労働安全衛生
d) 職場のセクシャルハラスメントの予防,防止;職場のセクシャルハラスメント行為の処分の手順,手続
đ) 使用者の財産,営業機密,技術機密,知的所有権の保護
e) 労働契約と異なる業務に一時的に労働者を異動させる場合
g) 労働者の労働規律違反行為及び労働規律処分の形式
h) 物的責任
i) 労働規律処分権限を有する者

就業規則の必要性を考えるきっかけ

このように法的には就業規則作成の義務があるわけですが、実際は就業規則を正式に作成していない企業は普通にあります。スタートアップ企業など少人数で事業を営んでいる場合、その場に応じて個別に対応できるケースが多く、就業規則が無くても問題になりにくいことから必要性に駆られる機会が少ないのでしょう。また規模が小さな会社の場合、就業規則を作成していないことについて当局から厳しいチェックが入るようなこともほとんどありませんので、これも作成をしていない理由の一つになるかと思います。

このような現状で就業規則の必要性を考える一つのきっかけになるのが懲戒処分です。懲戒は就業規則に記載があって初めて合理性をもつ処分形式となりますので、その規定がなくてはたとえ労働者側に過失があったとしても妥当な処分を行うのが難しくなります。遅刻や業務怠慢、パフォーマンス不足などによる懲戒も就業規則がなければ合法的に処分するハードルがグッと上がってしまいます。

就業規則の作成はこのような事態に迅速&合法的に対処するための対策であり、また事前に労働者にその内容を周知させることにより、このような事態が起こりにくくなる予防策にもなります。就業規則の作成は多くの企業に共通する項目が記載されたマニュアル的なものもありますので、そこに自社の規則を少し加えてアレンジするだけで、それなりのものが出来上がります。多少の手間と費用を費やすことで将来的なトラブルを回避できるのであれば安い物ではないでしょうか。

ちなみに就業規則は労働者に全内容を周知させて初めてその効力を持ちますので、企業側が作成して労働者の目に入らないところに保管しているだけでは実質意味がありません。雇い入れの際に書面で交付したり、いつでも就業規則に目を通すことができる環境を整備すること、また実際に目を通す機会を持たせるなどの取り組みをもって、初めて就業規則の効力が発揮されると認識してください。

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