全体的に遅刻が多いのでどう改善したらいいかベトナム人マネージャーに相談したところ、遅刻者から罰金を取るようにすれば遅刻を減らすことができると提案を受けました。罰金でも従業員からお金を取ることに抵抗があるのですが、そもそも法的に問題はないのでしょうか?
社内規定違反でも罰金を労働者に科すのは労働法上違反となります。
ベトナムで生活していますとルール違反や迷惑行為に対する罰金の張り紙をよく目にします。学生の遅刻に対して罰金を取るケースもあるようですので、ベトナム人にとって罰金を取るシステムは比較的違和感がないと言えるでしょう。ローカル企業でも従業員のルール違反について罰金制度を設けている会社が見られますが、そもそも法的な観点でこのような制度は合法なのでしょうか?今回は企業が労働者に罰金を科した場合について解説します。
規則違反における制裁
今回は相談のあった「遅刻」を例に考えていきます。始業時刻に遅れて従業員が出社してきた場合、規則違反としてどのような処分ができるでしょうか。労働法124条では労働規律違反に対する処分の形式が定められています。
Điều 124. Hình thức xử lý kỷ luật lao động(124条 労働規律違反に対する処理形式)
1. Khiển trách.(けん責)
2. Kéo dài thời hạn nâng lương không quá 06 tháng.(6 か月を超えない昇給期間の延長)
3. Cách chức.(免職)
4. Sa thải.(解雇)
労働法124条
労働者が規律違反を行った場合、上記の1~4に則った懲戒を行うことになります。遅刻の頻度がまだ少なかったり、軽度なものである場合は1のけん責(または戒告)に留まるのが普通です。また上記4つのいずれかの処分に限られていますので、雇用主が懲戒処分の代わりに罰金や給与削減を行うような行為は禁止されています。
因みに議定28/2020/NĐ-CP第18条3項のbによると、労働規律違反に対する処分の代わりに罰金や給与カットの制裁を労働者にした場合、雇用主に対して1000~1500万VNDの罰金が科されます。
実際のところ
このように法律上では罰金を取ることは禁止されているわけですが、実際はローカル企業を中心に罰金の制度を設けているところも珍しくはありません。具体的な例では、
・無連絡、特別な事情のない遅刻
・就業時間中の過度な私用行為
・整理整頓の不実行(決められた場所に物を戻さない、など)
のような罰金システムが見られます。罰金額は5万VND程度から10万VND辺りで、罰金として納められたお金は一時的に社内にプールされ、従業員同士の懇親会や福利厚生絡みの出費などに充てられることが多くなっています。また会社全体としてこういった制度を行っているとは限らず、各部署独自でこういった制度を設けているところもあります。これらは法的に認められないというのは上でも書きましたが、金額も高くなく、また罰金が自身の行動に起因することからそれほど問題として上がってきにくい現状があると思われます。
ベトナムでは似たような罰金システムが学生の教室内でも珍しくないと聞いていますので、これらの環境に疑問を感じにくいという背景もあるのではないでしょうか。(学生なので罰金額は5000~10000VND程度だそうです)
このように子どもの頃から罰金に慣れ親しんでいる?環境ですので、ベトナム人従業員から罰金を取るという提案を受けることもあるかと思います。しかし法的にはそのような行為は認められないということと、罰金が規律遵守に本当の意味で有効なものなのであるかを熟慮するべきでしょう。