退職した従業員のTRCの処理について

退職者のテンポラリーレジデンスカード(以下:TRC)を回収したいのですが、どのような流れで処理するのが一般的でしょうか?

規定上のやり方と実情で乖離が見られますが、以下の例を参考に対応するようにしてください。

ベトナムでは雇用している外国人が退職した場合、その退職者にかかるTRCを回収して取り消す処理をする必要がありますが、規定上ではどのような流れで処理をすることになっているのでしょうか。本記事では退職者のTRC処理に関する規定と、実際によく見られる企業の対応パターンを紹介します。

退職者のTRC処理の規定

TRCは雇用している企業が保証者として発給されていますので、TRCの対象者が退職することになった場合、回収して発行した当局に返還する義務があります。またベトナム移民法では以下のような規定があります。

“Thông báo bằng văn bản cho cơ quan quản lý xuất nhập cảnh về việc người nước ngoài được cấp giấy tờ có giá trị nhập cảnh, xuất cảnh, cư trú còn thời hạn nhưng không còn nhu cầu bảo lãnh trong thời gian tạm trú tại Việt Nam và phối hợp với cơ quan chức năng yêu cầu người nước ngoài xuất cảnh.(雇用者は有効な出入国及び居住許可を与えられている外国人についての通知を出入国管理局へ通知するだけでなく、ベトナムに滞在している間のその者の保証及びその者の出国までの調整を求められる。)

したがって雇用者は本来TRCの回収だけでなく、退職者の出国まで対応しなければなりません。しかしほとんどの企業ではTRCの回収までにとどまっているのが現状です。

各日系企業に見られるTRC処理のパターン

パターン①:規定通りに回収&返還し、出国用のビザを申請して帰国させる

パターン②:退職者が帰国してから後日TRCを会社へ返送させて返還の処理

パターン③:特に何も行わず、TRCの期限が切れるまで放置

①は本来の規定通り、②はグレーでよくあるケース、③はリスクが高い対応となります。

①の処理をした場合、入管から出国用ビザが発給されますので、その期間内は合法的にベトナムに滞在することができます。②は現状バレないので問題として上がらないというのが正確なところかと思います。③はたとえ退職済みの従業員であったとしても、そのTRCで引き続きベトナム国内に滞在していた場合、何かしらの問題が起きた際にその企業が保証者として責任を負うことになります。余計なトラブルに巻き込まれないためにも退職者のTRC処理はしっかり行うべきです。

帰国予定がない退職者の場合はどのように対応するべきか

上では退職後に帰国する前提で書きましたが、「他のベトナム国内の企業に転職する」あるいは「しばらくベトナムに滞在したい」という理由でベトナムに残る場合はどうなるでしょうか。以下で順に見ていきます。

ベトナム国内の企業へ転職する

この場合は前職企業にて労働許可書とTRCの取り消しをしてもらい、新しい会社を保証者として再度労働許可書、TRCを取得することになります。新しい会社でのTRCが発給されるまでの期間を考えますと、通常はこの前に商用ビザを申請して新しいTRCが発給されるまでの時間を過ごすことになります。

ベトナムにそのまま滞在したい

どこかに雇用されないでベトナムに滞在する場合、ベトナム人配偶者がいるなどでなければ通常は観光ビザでの滞在となります。コロナ禍で観光ビザの発給が停止されたのでそれが叶わず帰国しなければいけなかった人は相当数いましたが、これからはコロナ禍以前のこのやり方が使えるようになるでしょう。時折「前職のTRC期限が残っているから~までベトナムにいれる」と言う方がいますが、前職を退職した時点でTRCの効果はなくなるという感覚でいたほうが無難です。

退職者がTRCを返さなかった場合はどうする?

決裂して退職したり、急に消えたなどによる退職の場合はTRCが返却されないことがあります。このケースでは企業はどう対応するべきでしょうか。

何かしらの理由により手元にTRCが無い場合でも取り消しの処理は可能です。正確には取り消しではなく、TRCがないことにより取り消しの申請ができない理由を入管に通知することになります。この通知をきっちり行うことにより、同TRCを持った退職者が何か問題を起こしたとしても、保証者としての責任を免れることができます(一部の場合を除く)。いずれにしてもTRCが無いからという理由で何もしなくてもよいということにはなりません。

円満退職であればTRCをいつ取り消しするのかについて事前に話し合い、その時まで出国するのか次のビザの準備をするのかについて猶予期間を与えることはよくあります。一方そのような話し合いが特にない場合であれば大抵は雇用者の独断で取り消し処理をすることになります。そのタイミングなどで揉めることなどがないよう、労働契約書などに退職後のTRC返却に関する内容を盛り込んでおくことも一考です。

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2件のフィードバック

  1. 通常TRCでは銀行取引が可能ですが、出国VISAの場合は銀行取引は可能でしょうか。以前TRCが切れて銀行口座がロックされました。新しいTRCを銀行に見せたら再度口座が再開された事が有り、出国VISAに切り替えた場合銀行取引はどうなるでしょうか。

    1. 川口様
      ご質問ありがとうございます。
      銀行口座のロックについては各銀行の規定に則りますので利用している銀行に直接問い合わせることが確実です。ただ「口座の閉鎖」は通達23/2014/TT-NHNN第11条に規定されている条件下でしか認められておらず、TRCやビザの期限切れは口座閉鎖の対象外とされていますので少なくともTRCの期限切れで口座が閉鎖されることはないでしょう。

      因みに入管でTRCを破棄したとしてもその通知が銀行に行くとは考えにくいので、既存のTRCの期限内であれば出国ビザに切り替えた途端にロックされるということにはならないと思われます。出国ビザに切り替え後に何か銀行窓口で手続きをする場合には、破棄されたTRCと同一人物であることが確認されれば問題ないでしょう。ただし日本や海外への送金については必要な書類の関係上、出国ビザ切り替え前に行うことをお勧めします。

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