労働許可書用の健康診断における受診項目の揺れ

労働許可書用の健康診断ではどういった項目を受診する必要がありますか?人によって受診している項目が微妙に違う気がするんですが。。。

法令では必要な項目として「基礎項目」と「追加項目」が定められていますが、基礎項目の受診のみで受理されているケースが見られ、法令と実情との乖離が見られます。実際のところは担当者のみぞ知る、といったところでしょうか。

ベトナムで労働許可書を申請するためには健康診断の証明書を提出する必要があります。ベトナムの指定病院で受診する場合は目的を伝えるとそれ用にアレンジしてくれますが、法令に指定されている検査項目と実情にズレが見られますので、今回はその点について調査した内容を書いていきます。

労働許可書用の健康診断に必要な受診項目とは

(法令に掲載されている基礎健康診断の書類雛形。多くの病院はこのフォームに則って作成している。)

通達14/2013/TT-BYTには外国人が労働許可書用に受診すべき健康診断の各規定が掲載されています。外国人、ベトナム人を問わず満18歳以上の者がベトナム国内で就業する場合に必要な健康診断の項目として「基礎項目」が挙げられており、更に外国人の労働許可書取得のためには「基礎項目」に加え「追加項目」も受診しなければならないとしています。

【基礎項目】通達14/2013/TT-BYT第11条1項

  • 身長、体重、BMI、血圧測定
  • 一般的な内科検査(循環器、消化器、呼吸器、泌尿器、筋肉、神経系を含む)
  • 一般的な外科検査、婦人科(女性のみ)、眼科、耳鼻咽喉科、歯科
  • 血液、尿、胸部X線レントゲン検査

【追加項目】通達14/2013/TT-BYT第11条2項

  • 血液検査(基礎項目で調べる以外の項目)
  • 血中のマラリア原虫の検査
  • A,B,C,E型肝炎検査
  • 結核、梅毒、HIV検査
  • 妊娠検査
  • 薬物検査
  • 寄生虫便検査
  • ハンセン病検査
  • 心電図、脳波、超音波検査

基礎項目と追加項目を見てみますと少し疑問が浮かびます。既に労働許可書を持っている方で健康診断の受診経験のある方には「性病検査なんかしたっけ?」「便なんか提出してないぞ。」と思う方もいるでしょう。それ以外にも追加項目について「???」な方もいらっしゃるかと思います。ほとんどの方で受診項目に覚えがあるのは基礎項目ではないでしょうか。

実情から推測できること

まずベトナムで受診する場合、国から指定されている病院で受診すれば項目に関して特に気にする必要はありません。受診前に労働許可書用の健康診断と伝えておけば、たとえ追加項目を受診していなかったとしても最終的には医師が「就労について問題がない」旨を診断結果に記載してくれるはずですので申請は通ります。

また労働局からは「法令に則った項目を受診してください」という回答のみでしたが、書類を提出した際のチェックで重視しているのは上に書いた医師のコメントのように思えます(あくまで個人的な肌感覚です)。

他にも労働関連を専門に取り扱う複数のベトナム人弁護士にも聞いていましたが、

「追加項目は特定の国や地域に該当する外国人に求められるのでは?」

「追加項目はその症状が疑わしい人にだけ求められるのでは?」

などの意見や憶測が聞かれました。ただ最終的にベトナムで働くことに健康上問題がないかを判断できるのは権限を与えられた病院に所属する医師のみで、健康診断はそれを判断するための参考材料として行われているに過ぎないということのようです。つまり極端な話、数値上誰が見ても健康体でも医師がGoサインを出さなければ審査にはねられるということになります。

以上が調査結果となります。とりあえずベトナムの指定病院で受診する場合、項目についてはその病院に丸投げで大丈夫です。一方、日本で受診する場合ですが法令通り「基礎項目」と「追加項目」の受診が一番無難ですが、実情は「基礎項目」のみで労働許可書の申請が通った実績もあります(他に書類翻訳その他の処理は必要)。またどちらにしても医師からの「就業に問題がない」コメントと印鑑を添えてもらうことが必要最低条件となります。

因みにベトナム国内で受診した健康診断結果は受診日から12か月有効となりますが、国外の場合は6カ月となりますのでお気を付けください。

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