「13カ月目の給与」と「テト賞与」は同じものという認識でしたが、そうではないというベトナム人従業員がいました。その辺りの事情について詳しく教えてください。
ベトナム人でも慣習的に同じものと認識している人は多いです。ただローカルでは明確に別物として区別している企業もありますので、その辺りの理解はしておいてもいいかと思います。
「13カ月目の給与」。ベトナムに進出する際に多くの人が聞いた言葉かと思います。慣習的にテト前に1か月分の賞与を払う会社が多いことから「テト賞与=13カ月目の給与」という認識が広まっていますが、そこを明確に区別して賞与規定を設定している会社もあります。本記事では「13カ月目の給与」と「テト賞与」の定義について紹介します。
13カ月目の給与とは
まず法的に「13カ月目の給与」を定義するものはありません。「給与」という言葉を取り上げると現実の暦月(12か月)以上の月分の給与となりますので、12か月の暦を終えて最後に支払う「賞与」として解釈することができます。したがってこれは会社が従業員の年間の働きに対して支払う賞与です。この年間の定義は会社によってそれぞれですので、例えば年1回の賞与の支払い月が6月である場合、13カ月目の給与が6月に支払われるということになります。つまりテト前である必要はないということです。
またこれは一般的な「賞与」という位置づけですので、その賞与の額については労働法第104条の通り「生産、経営結果、労働者の業務達成程度に基づいて支給」されるものでなければなりません。
そしてこの「13カ月目の給与」つまり「賞与」は労働契約に記載がない場合は必ず支給しなければならないものではありません。
テト賞与とは
「テト賞与」とは名前の通り「テトに向けて支払われる賞与」です。普通テト賞与はテト前に支払われるものですが、これを通常の「賞与」と同じ定義として扱うかはその企業の賞与形態に依るところが大きいです。
テト賞与とは別に13カ月目の給与を支給しているような会社では、労働法上の「賞与」の定義を満たしていない場合でも違法性はありません。例えばテト前のイベント時にするゲームやチームタスクの結果でテト賞与額が変わるといったことをやっている会社もあるわけで、この場合はイベントで得る賞金的なイメージです。これは従業員がテト賞与とは別に賞与が保証されているという理解があるから成り立つことかと思います。
まとめ
以上を踏まえると「13カ月目の給与」とは一般的な「賞与」を指し、「テト賞与」とは「通常の賞与とは別にテトに向けて特別に支払われる賞与」というのが厳密なところです。ただ慣習としてテトの祝いやめでたさの他、出費がかさむこの時期はよりお金が必要となることから「13カ月目の給与」をテト前に設定する企業が多いので、「13カ月目の給与=テト賞与」という認識が広まったと考えられます。
時々賞与の支給時期がテト前でないにもかかわらず「テト賞与有り」という求人を見ることがありますが、余計な誤解を生まないためにも単に「賞与有り」と記載したほうがいいかと思われます。