就業規則とは別に社内規定を設けたいと考えていますが、作成に当たって注意するべきことはありますか?
社内規定は比較的自由度が高いので労働者目線で明らかに不利な内容となっていないかを意識しながら定めるようにしてください。
現在法令において全ての会社に就業規則の作成が義務付けられています。一方社内規定については特に取り決めがありませんが、社内秩序の維持のためにもルールを作りたい際にはこの社内規定が有効となります。今回は就業規則と社内規則の違い、作成する際のポイントについて解説します。
就業規則と社内規定の違い
まずは就業規則と社内規定の位置付けから解説します。
就業規則
就業規則は法令の基準を前提とした内容であることが求められ、現在全ての会社において作成が義務付けられています。また従業員数が10人以上の企業は就業規則を人民委員会に登録しなければならず、作成や修正などに当たって従業員を代表する組織の意見を参考にする必要があります。(労働法第118条、119条)
以下の主要な内容を含むものとし、これらの規則に則って企業活動を行うものとされています。
a) 労働時間,休憩時間;
b) 職場の秩序;
c) 労働安全衛生;
d) 職場のセクシャルハラスメントの予防,防止;職場のセクシャルハラス
メント行為の処分の手順,手続;
đ) 使用者の財産,営業機密,技術機密,知的所有権の保護;
e) 労働契約と異なる業務に一時的に労働者を異動させる場合;
g) 労働者の労働規律違反行為及び労働規律処分の形式;
h) 物的責任;
i) 労働規律処分権限を有する者
社内規定
ベトナムでは社内規定について内規(nội quy)と一般に呼ばれ、法令上具体的な定義はありません。会社によっては就業規則と社内規定を同じものとして扱っているところもありますし、内規(nội quy)として別に定めているところもあります。企業に属していなくても公共の場で内規(nội quy)を見る機会は頻繁にありますので、一般的には会社その他において秩序を保つための「個別ルール」のようなものとして認識されています。企業で内規を設定する場合でも就業規則のように作成義務や登録、労働者の意見を聞くといった法令はありません。
具体的な社内規定とは?
上で書いた通り企業活動の上で法令に則った決まりは就業規則となりますので、それ以外の企業独自ルールを設ける場合は社内規定(以下「内規」)で定めることになります。例えば就業規則には労働時間を記載しなければなりませんが、タイムカードの打刻という決まりを設ける場合は「内規」で定めることになります(厳密には就業規則に盛り込んでも問題はありません)。これは労働時間については労働法上の基準が定められていますが、具体的な記録手段は各企業ごとに異なりますので、この内容については就業規則で求められるものではないからです。
他にも事務所内でのゴミの分別、事務所内施設の利用方法、外出の許可、なども社内規定として任意で定められるような項目となります。以上から内規は比較的自由に定められるルールとなりますが、労働者にとって明らかに不利と思われる規定や法令に反する内容は認められません。
社内規定違反で懲戒処分はできる?
懲戒処分をする場合はその具体的な内容を就業規則に盛り込まなければなりません。ですので盛り込まれていれば懲戒処分の対象にはなりえます。
例:社内規定に繰り返し違反し、然るべき注意、指導をしても一向に改善が見られない場合は就業規則の規定に則り懲戒に処す。
しかしこの違反した社内規定と懲戒処分の内容に客観的な合理性や社会通念上の妥当性があるかは個別の案件ごとの判断となりますので、就業規則の違反に対する懲戒と比べて可能性としては少し弱まると考えたほうがいいでしょう。
企業活動を続けていく上で社内秩序の維持のために新たなルールの必要性を感じることはよくあります。その際に比較的着手しやすい内規ですが、作成に当たってはたとえ義務ではなくても快適な職場環境の形成という観点から労働者の意見を聞いて作ることをお勧めします。