妊娠した場合は会社へ報告するよう上司に言われましたが、それは個人の自由ではないでしょうか?
会社都合で報告を義務付けるのは認められませんが、母体や胎児の保護という観点からであれば認められる可能性はあります。
ベトナムで現場を管理するマネージャーであれば女性従業員の妊娠や産休に対応する機会は多いものです。出産に伴う退職や産休などで人員体制にも影響が少なからず出るものですが、早い段階で対応するために妊娠を報告することを義務付けることは可能なのでしょうか。本記事では2つの観点から解説していきます。
会社都合での妊娠報告義務は原則認められない
ベトナムの労働法第10章には女性労働者及び性別における平等について規定されています。同章第137条では妊婦の保護について記載されていますが、内容としては主に妊娠中の従業員に対する使用者の義務や配慮すべきことなどが書かれています。
したがって例えばできるだけ早く妊娠していることを把握して人員補充に十分な時間を取りたいといった理由や、産休などで抜けることを見越して現在の人員体制を見直したいなどの理由から就業規則などで妊娠報告の義務を定めるのは越権行為として認められません。妊娠したことについての報告は労働者に委ねるしかないと言えるでしょう。
母体や胎児保護といった観点からだと認められる可能性も
先ほど挙げた労働法第137条1項では以下の規定があります。
1. Người sử dụng lao động không được sử dụng người lao động làm việc ban đêm, làm thêm giờ và đi công tác xa trong trường hợp sau đây :
a) Mang thai từ tháng thứ 07 hoặc từ tháng thứ 06 nếu làm việc ở vùng cao, vùng sâu, vùng xa, biên giới, hải đảo
(1,使用者は以下の場合において深夜労働及び遠方への出張のために労働者を使用することができない。
a)妊娠7か月以降の者又は高地,奥まった地,遠隔地,国境地帯、島嶼部においては妊娠6か月以降の者。)
使用者は上記に当てはまる従業員を使用してはならないとしています。こういった業務が発生する職場においては法令を遵守するという意図で使用者が従業員の妊娠を把握することは必要な行為と言えます。このケースで使用者が妊娠の報告を義務付けることは母体と胎児の安全という観点から認められる可能性が高くなるでしょう。ただし法令の通り妊娠6か月または7か月という時期が一つの目安となり、早い時期からの報告義務は定めるべきではないでしょう。
妊娠の報告義務の可否についてはそれが当人の安全に関わるかどうかがポイントとなります。人員体制などといった会社、使用者の都合による理由であれば合理性を欠くことになるのでご注意ください。