ベトナムの生理休暇は日本の生理休暇とどのような違いがあるのでしょうか?
大きくは有給なのか無給なのか、また1日あたりの休暇時間が設定されているかになりますが、両国における生理休暇の主旨が分かると理解しやすくなります。
ベトナムの労働法では日本と同じく生理休暇に関する規定がありますが、その取扱いは若干異なります。本記事では両国の生理休暇を比較しながらその違いと主旨について解説します。
日越の生理休暇規定
同じ生理休暇でも日本とベトナムではどのような違いがあるでしょうか。以下で日越の生理休暇規定を比較しながら紹介していきます。
ベトナム
Lao động nữ trong thời gian hành kinh được nghỉ mỗi ngày 30 — trong thời gian làm việc. Thời gian nghỉ vẫn được hưởng đủ tiền lương theo hợp đồng lao động. (生理期間中の女性労働者は1日30分生理休暇を取ることができ、その時間は労働契約に従った給与全額を得ることができる。)
労働法第137条4項
生理休暇を判断する客観的な基準を設けるのは難しいため、女性労働者からの請求により休める権利を持つという解釈となります。つまり使用者が全女性労働者に対して必ず30分の生理休暇を与えなければいけないというわけではありません。因みに30分は有給とありますが、それを超える時間については有給である必要はないということになります。また生理休暇を取れる日数上限はありませんので、法令上、使用者は日数に関係なく女性労働者の申請に応じる必要があります。
日本
(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
労働基準法第68条
同じく女性労働者が生理休暇を請求した場合にのみ使用者は休暇を与えなければならないという規定となります。ベトナムと大きく異なるのは時間が設定されていないという点と、その休暇に対して有給か無給かは問わないという点です。つまり女性労働者は1日や半日、または時間単位で休暇を申請することもできますし、それに対し使用者はその生理休暇を有給にするか無給にするかを決めることができるということになります。これは生理休暇の基準が自己申告に委ねられるため、不正な有給休暇の取得を防ぐという労使平等の立場に則っていると言えます。またベトナムと同じく休暇期間に上限を設けることも認められていません。
日越の法令の主旨
日本の法令では、女性が生理により労働が困難な場合に休暇を請求できる環境を整えようという意図が伝わります。またそれに対して有給を強制するのは使用者側にとって公平ではないという考えも見られます。一方ベトナムの法令で、30分は有給の生理休暇というところにフォーカスすると「なぜ30分なのか?」という疑問が浮かびます。生理により就業が困難な程度の女性労働者が30分休憩するだけで辛さが軽減されるものなのでしょうか?
30分の意味
この点の法令の主旨についてベトナム人弁護士と意見交換してみました。
労働時間中の休憩30分というのは、痛みや辛さを軽減させるための30分というよりは生理に伴う衛生用品の交換や洗浄などに充てられるものという意味合いが強いようです。つまり生理期間中は通常時よりもトイレに行く頻度や時間も多くなりやすいことから、そのための時間を権利として与えなければならないという主旨になります。30分でもその時間が「労働時間中」であること、また「連続して30分」ではないところがポイントで、就業時間を通じてこれらに割く時間を確保しようという目論見があるようです。(30分きっちり時間を測って管理している会社はそうないと思いますが。)
そう考えると30分を超えた場合は無給でも認められるというのは、日本の生理休暇に即した考え方とも言え、ベトナムで労働が困難な程度の生理の場合、使用者に休暇を請求することはできるものの、30分を超える分には有給か無給かは問わないという解釈ができます。
日越両国で生理休暇に関する規定はあるものの、現行法を見るとその主旨は、
日本の場合:自宅などで休むための生理休暇を取りやすくするもの
ベトナムの場合:労働時間中における生理による対応の時間を確保するもの
といったところになりそうです。実際のところ法令の不知や周りの雰囲気などから生理休暇を積極的に取る女性労働者は両国とも依然少ない状況ですが、使用者側としては請求があった際にはきっちり対応ができるようにしておきたいところです。