日本人と話をするときに「給料・給与・賃金」の言葉が出るんですが、それぞれ意味は違うんでしょうか?
厳密には意味が異なりますが、習慣上は同じ意味として使っている日本人も多いと思います。
日頃何気なく使っている「給与・給料・賃金」という言葉。ベトナム人がこれらの日本語を聞くと意味の違いに混乱することがあるようです。今回は日本語における「給与・給料・賃金」の定義とそれに対応するベトナム語について解説します。
日本語における「給料・給与・賃金」の定義
まずは日本語における「給料・給与・賃金」における定義を確認しておきます。日本の辞書に書かれている定義と法律上の定義では若干違いが見られますが、こちらでは法律上に則った定義で記載します。
給与
会社から与えられる報酬すべてを指す。基本給の他、残業代、賞与、各種手当など会社から労働の対償をして支払われる一切のものをいう。「給与」は与える側(使用者)の視点に立って使われる。
給料(参考:船員法第4条)
会社から労働の対償として受け取る報酬から残業代や各種手当などを除いた額をいう。基本給や固定給に相当するもの。
賃金(参考:労働基準法11条)
名称を問わず労働の対償として使用者から支払われるすべてのものをいう。定義としては「給与」とほぼ同じである。ただし給与は原則として報酬は金銭に限られる(現物支給を含むという解釈もあり)が、賃金は現物支給も報酬に含まれるなどの違いがある。給与に対して賃金は受け取る側(労働者)の視点で使われる。
以上の定義に則りますと、例えば求人に記載する待遇面で基本給や賞与、手当などを記載する欄は「給与」や「賃金」となりますし、基本給について尋ねる場合などは「給料」という言葉を使うことが正確となります。
ベトナム語で区別はあるか?
日本語が分かるほとんどのベトナム人は日本語の語彙を理解するために自国の言葉(ベトナム語)に置き換えて考えるものです。そのときに置き換えが可能な言葉があれば理解は早いのですのが、ベトナム語に「給与・給料・賃金」に関する言葉の違いはあるのでしょうか?
ベトナムの労働法で使用される「賃金」
ベトナムの労働法では「tiền lương」という単語が使われており、JICAから出されている日本語訳では「賃金」と訳されています。この単語は主に「給料」と訳されますが使用範囲が広く、上で説明した「給与や賃金」の意味で使われることも普通にあります。求人などでも待遇面で金額を記載する場合は「tiền lương」が用いられ、お金を意味する「tiền」を省略した「lương」のみで書かれることもよくあります。
もうひとつの給料「tiền công」
一方もう一つ「給料」の意味でよく見られる「tiền công」という単語があります。この語の定義はベトナム人でも曖昧な方が多いようですが、こちらは主に日雇い労働といった日単位で支払われる賃金、また1週間やそれ以下の期間などでの仕事の成果などについて支払われる賃金を指します。「tiền công」は主にブルーワーカーを代表とする技術者系の賃金について使われる単語で、ホワイトカラー系の職業には通常使われません。ベトナム語で「給与・給料・賃金」を指す二つの単語を纏めると以下のようになります。
tiền lương:一般的に月額で支払われる賃金。基本給のみか手当などを含むかは場合によって変わる。
tiền công:日または短期間で仕事の成果として支払われる賃金。主にブルーワーカーの仕事が対象。
以上から日本語の「給与・給料・賃金」と同じ定義の単語はベトナム語にはありませんので、これらの区別の理解にベトナム人は悩みやすいと言えます。それぞれの単語の意味を区別できるようにするかは個人の意識に委ねられますが、日本人が日本語人材と話す場合は「給料」という単語が一番相手に伝わりやすい基礎単語となります。