日本の親会社のルールに則ってベトナム現地法人でも刺青の禁止を就業規則に盛り込もうと思っています。ベトナムではこの点についてどのような反応を受けるでしょうか?
就業規則に刺青禁止を盛り込むことは問題ないですが、ローカル企業で禁止しているところは少ないそうです。
日本社会では刺青(タトゥー)に対して依然厳しい目があり、特に会社員の場合は何かと制限を受けることが多いです。いわゆる「カタギ」ではない人が入れる刺青とちょっとしたファッション感覚で入れる刺青は似て非なるものですが公共の場では同じ扱いを受けることも少なくありません。今回はベトナム社会における刺青事情について解説します。(*本記事では「刺青」と「タトゥー」は同じものとして取り扱います。)
職業に応じて刺青を禁止する法律はベトナムにはない
現在ベトナムでは特定の職業において刺青を禁止する法律はありません。以下で比較的「固い」部類に入る代表的な職業を挙げて見ていきます。
公務員
2008年制定「公務員・役所幹部の法律」第18~20条には公務員が行うことが許されない事項が規定されています。大きくは権利の乱用や機密の漏洩、ストライキの他、生産、事業、人事業務などに携わってはいけないというものになっており、服装及び頭髪に関する規定はあるものの刺青についての言及はありません。過去には法改正に当たって公務員の化粧や香水の使用、華美なアクセサリーや刺青を禁止する案も出たようですが、国民からの反発を買って見送りとなりました。
弁護士
ベトナムの弁護士法でも弁護士として活動する規定の中で刺青を制限するものはなく、現行法では個人の自由と解釈されています。
企業の従業員
刺青を法的に禁止することはありませんが、各社の就業規則で刺青を禁止している企業もあります。ただしベトナムでは本当に能力や資質があるのであれば刺青の有無はこだわらないというスタンスの企業が一般的で、禁止を明言している会社は少ないようです。
ベトナム人で刺青がある人の割合
少し古い調査になりますが2015年にベトナム市場研究団体が実施した調査によると、18歳~39歳の無作為に選んだ男女700人に刺青の有無を尋ねたところ、約4%が「有る」と答えたそうです。部位としては順番に「腕」「肩」「首」と数が多くなっています。潜在層も含めると3割弱が刺青に興味を持っていることが分かります。
私の周りでは大卒で比較的真面目な会社員でもワンポイントの刺青を入れている人を見る機会が結構あります。ただ就業中の服装では見えないようなところが多く、どちらかというとプライベートの私服時などにそれが分かるといった感じです。それなりに良識のある人であれば仕事時に刺青があからさまに見えるのは良くないと自覚していることが窺えます。
ベトナムでは業務に支障をきたさない限り、明らかに度を越えたものでなければそれほど刺青の有無に目を光らせる必要はないと個人的に考えます。それで内面も判断してしまうのは早計ですし、それによってポテンシャルのある人材獲得の機会を狭めることを考えれば画一的に禁止するのではなく都度柔軟な対応をできるようにしておくのが得策かと思います。