ベトナムでの学校制度や入試制度、一般の人が進む進路などについて教えてください。
学年の区切りや呼称、入試制度が日本のそれと異なりますのでその部分を理解しておけば大体は理解したことになるかと思います。
一緒に職場で働いているベトナム人がどういう教育制度の元で学校を卒業して、社会に出ているのかは案外知らない人も多いものです。今回はベトナムにおける学校制度及び卒業後の進路について解説します。
ベトナムの学制とは
概要
ベトナムでも義務教育制度があり、期間は小学校(trường tiểu học)から中学校(trường trung học)までの7歳から15歳までで日本の義務教育制度と同じものとなっています。ただしベトナムは小学校が5年制で中学校が4年制となりますので、小学校の卒業年と中学校の入学年が日本と異なります。
そして義務教育卒業後の進路は高等学校(trường phổ thông)または就職(xin việc)などになりますが、現在はほとんどの人が高校に進学していますので、その点も日本とほぼ同じという認識で問題ないでしょう。
各学年ごとの呼称
我々日本人は学年について「小学5年生」や「中学1年生」、「高校3年生」といった学校ごとの年数で区切って学年を表すのが一般的です。一方ベトナムでは小学校から高校まで通しで学年を数える習慣があり、日本の中学3年生にあたる「9年生(lớp9)」とか日本の高校3年にあたる「12年生(lớp12)」といった言い方がされます。ベトナム人から日本語や英語でそのまま「9年生」などと言われると、そういった事情を知らない日本人は戸惑うことになります。
因みに小学校は1、中学校は2、高校は3といった数字で表す言い方もあり、「学校」を表す(trường học)の後ろに「cấp1」「cấp2」「cấp3」を付けて小学校、中学校、高校と表現することもあります。
高校卒業後の進路
高校卒業後は4年生大学、短期大学、専門学校、就職のいずれかに進むのが一般的でこちらも日本のそれと大体同じと考えていいでしょう。近年は大学の進学率が上がっており今後もその傾向が続くと見られています。高校卒業後の進路における大まかな特徴を以下に記載します。
①4年制大学:
日本の大学とほぼ同じ。かつては金銭的にもそれなりに余裕があり、学業が優秀な者が進むイメージだったが経済発展に伴い大学に進学する者が増加。これに伴い大学生全体のレベルの開きが大きくなっている。
②短期大学:
2-3年が一般的。高校卒業で進学する以外に社会人になってから入学し直す場合でもよく見られる。ベトナムでは卒業学部に関連した職業につく傾向が高いので、キャリアを変えたいと思った場合に通信や夜間で社会人枠として大学に入り直す人も多い。
③専門学校:
2-3年が一般的。技術系が多く特定の分野でのスキルを身に着けたいという思いがある人以外では大学進学が学業的に叶わずこちらに流れるといったケースも見られる。
④就職:
家業の手伝い、工員、海外労働派遣者などのいわゆる高卒者。海外派遣者は帰国後に大学に入る人もいるが、ハノイの場合はハノイ工業大学に進学する人が多い(元技能実習生など)。
高校の卒業試験は全国共通
ベトナムの高校卒業や大学入試制度は日本のそれと異なる部分が多く、日本人の感覚で考えると少し戸惑う部分があります。ここでは高校卒業から大学進学に関する制度について紹介します。
高等学校国家共通試験(Kỳ thi trung học phổ thông quốc gia)
全国の高等学校共通で実施される国家試験です。これは高等学校の卒業試験の役割があり、卒業のための必須受験となります。また大学進学を希望する学生は、この試験の点数から入学可能な学校が割り振られ、その中から進路を選択するという形となっています。これは日本のセンター試験と似て非なる位置づけとなります。
ですので大学進学ができるレベルの受験生であれば、不合格による進学先がないという事態は通常起こりにくくなります。またよりレベルの高い学校に入学するために来年受験し直すという浪人概念もベトナムでは基本的にないようです。現役のハノイ大学の学生にクラスの浪人率を聞いてましたが、いないかクラスに1-2人程度とのことで、またその理由も大体は家庭の事情だそうです。
ベトナムの大学進学と日本の大学進学で異なる点は制度の他に、ベトナム人学生の意識として
①卒業後の進路を見据えて学部を選択する学生が多い
➁学校の名前(ネームバリュー)には表面上こだわりを見せない
③都市部出身者は学校選びに通学距離も重視する
といった傾向が見られます。周りのベトナム人に「なぜ○○大学へ進学したのか?」と聞いてみるのもベトナム人の大学意識について知れるいい機会となります。