レジデンスカードの取得費用は自己負担?

ベトナム人と結婚したということでレジデンスカードの取得費用が会社から支給されなくなりました。結婚前には支給されていましたし、労働契約書にも会社が支給する旨が記載されているのですが、これってどうなんでしょうか?

パッと見で契約違反な気もしますが、掘り下げて考えてみると少し議論の余地がありそうです。

弊社ではベトナム人配偶者を持つ日本人の方から個人でレジデンスカードの取得/更新の依頼を受けることがよくあります。個人依頼ということで会社がこの費用を負担してくれないという方が大半となっていますが、ベトナム人と結婚する前は会社が費用を負担してくれていたというケースが時折あります。今回はこの点についての私見を述べていきたいと思います。

労働許可書→レジデンスカードの流れ

駐在員であれ現地採用者であれ、労働許可書(以下:WP)やそれに紐づくレジデンスカード(以下:TRC)の取得費用は会社負担というところがほとんどです。通常、労働者は会社の事務的な協力無しでWPとTRCを取得することはできないので、これらの取得作業も会社(または外注先)に丸投げしているというのが普通です。このケースで取得できるWPは最長2年の有効期間となっており、TRCもWPに紐づき同じく最長2年で発行されます。この時に発行されるTRCのタイプは「LĐ(労働)」となります。

一方ベトナム人と結婚した場合はWPの取得が免除されてTRCはベトナム人配偶者を基に取得するため、個人での取得が可能となります。このケースで発行されるTRCのタイプは「TT(親族)」で通常3年の有効期間となりますので、先ほどのWPに紐づいて発行されるTRCより1年程度有効期間が長いことになります。ちなみにWPの取得が免除されるといっても、企業側がその人材を雇う場合は「WP免除申請」という処理をしなければなりません。ベトナム人と結婚した外国人労働者を雇用するといっても、何もする必要がないというわけではないので注意してください。

今回の要旨

よくある相談として今回の要旨は以下となります。

・入社時はまだベトナム人と結婚しておらず、WPとTRCの取得費用は会社が負担していた。労働契約書 にも会社が負担することを明記している。

・ベトナム人と結婚後、現行のWPとTRCの期限が切れるに当たり、会社はWPの免除申請を行うものの、TRCについては個人で取得するよう指示。またそのTRCに関する費用についても会社は負担しないとのこと。

・入社時の労働契約でWPとTRCの取得費用は会社が負担すると書いてあるので、TRCの取得費用は会社が負担するべきではないか?

労働者側の立場では契約不履行のように思われます。一方企業側からすれば会社に関わりなく取得できるTRCなので、これはあくまで個人の活動範囲のもの、といったところでしょうか。

何を前提としているか

多くの企業がWPとTRCの取得費用を会社負担としているのは「取得義務が企業に科されている」「個人で負担するには額が大きい」「他の会社も慣例上そうしているから」といったところだと思われます。特にこの取得義務については労働法153条にも言及されていますので、労働者の意思如何に関わりなく使用する場合は企業側が取得させなければなりません。また自社のWPに紐づいて発行されるTRCは保証元がその企業となりますので、言わば企業はその外国人労働者を使用する以上、労働許可から滞在まで責任を負わされていると解釈できます。

一方ベトナム人配偶者を持つ外国人労働者を使用する場合はWPの免除申請を行う必要がありますが、TRCについては「TT(親族)」タイプとなりますので、保証元はベトナム人配偶者となります。つまりこのケースでは企業は労働許可に関する義務は負うものの、滞在までの責任は負っていないことになります。またTRCの有効期限もWPに紐づいていないので企業での就業とは無関係なものと捉えることもできるでしょうか。

このように解釈すれば労働契約でWPとTRCの取得費用は会社が負担するという真意は「(企業が義務付けられている)WPとTRCの取得費用は会社が負担する」というふうに考えることもできなくはありません。それでも文言が不足していると言われればそこまでですが、何かしらの理由付けをすればそのように主張することもできるのでは、という話です。

ただしどのように解釈するにしても、一度会社がWPとTRCの取得費用を負担していた場合、たとえベトナム人と結婚したからといって、急にTRCの取得費用を支払わないという態度を取れば腑に落ちない外国人労働者もいるでしょう。雇用側がそれに関する負担の線引きをしっかりしておきたい場合は労働契約内に但し書きなどを盛り込むことをお勧めします。

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